「ねー銀ちゃん」 「ああ?」 銀ちゃんはジャンプを読みながら上の空の返事をした。ねえ銀ちゃん、もう一度名前を呼ぶと銀ちゃんは隣りにいる私の頭にぽんぽんとあやすように手を置く。この私よりずっと大きな手の重さはとても丁度良い。 「なにちゃん、構ってほしいの?」 「違うよ」 「つれねぇーなあ。銀さん泣いちゃう」 やはりジャンプを読み続けたまま、銀ちゃんは笑う。めくったページの隙間からギンタさんが見えた。 頭にあった大きな手はそのまま私をなぞり、肩を過ぎて腰に置かれた。私を抱く片手をぐっと自分に引き寄せると私も引き摺るられるようにしてぴたりと銀ちゃんの横にくっついた。 「こうしてほしいくせに」 開いているページを下にして机の上にジャンプを置いた銀ちゃんは、よっこいせという掛け声と共に私の両脇に手を入れた。持ち上がった私の体は銀ちゃんの足の間に着地する。 かーわいいねえと銀ちゃんは後ろからがばりと私を抱き締めた。 いつもそうだ。 私を包み込む銀ちゃんの大きさは、何とも言えない安心感とそれでいてきゅっと心をつままれて泣きたくなるような、そんな気がする。 その痛みはどうしてだろう、不思議と不安は感じない。 「銀ちゃん」 「なに」 「ずっとこうしてたい」 「いつまででもしてやるよ」 銀ちゃんがそういえば、私はもっともっと心をつままれたような気がする。でもやっぱり、不思議とそれは私を安心させる。 いつだったかそう銀ちゃんに話したら、矛盾してるなといってわらっていた。 私はすこしまえから、それを恋と呼んでいる。
なづけられたこころ
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