ちゅんちゅんと小鳥の鳴く声が聞こえて覚醒しきれない頭でぼおっと辺りを見回す。襖から明るい光が漏れているからもう正午にも近い時間なんだろう。反対側を向くと小さく寝息を立てる銀ちゃんがいた。久しぶりに干してふかふかした布団と、太陽の匂いのする枕で、気持ちよさそうに寝ている。そして私はその銀ちゃんが伸ばした腕に頭を乗せていた。 もう少し寝てもいいかなと思って銀ちゃんに近づくと、銀ちゃんは小さくうなって薄く目を開けた。 「おはよう」 「・・・はよ」 それだけ言って銀ちゃんはぎゅっと抱き枕のように私を抱え込んだ。温かい銀ちゃんの体温と近い距離に私はどうしようもなく満たされた気になる。 「起きる?きっともうすぐお昼だよ」 「まだいいだろ」 でも、と言う前に銀ちゃんはその言葉を遮るようにまた私を抱き寄せた。 でも、今日の夜は新八君神楽ちゃんと一緒に、お誕生日会をするんだからそろそろ起きないと。 起きたらまず、遅めの朝ごはん(きっとお昼ご飯と一緒になるんだろう)を食べる。甘い甘いフレンチトーストを作ってあげよう。 その次に、一緒にお買い物に行って今日の晩御飯の材料とケーキの材料を買う。ケーキはこだわるだろうけど、晩御飯は何でもいいって言いそうだから、そうしたらハンバーグを作ってあげるつもりだ。本人はあまり言わないけど、好きな食べ物とかは結構子供っぽかったりする。帰ってきたら晩御飯とケーキ(もちろん苺のショートケーキ)を作って新八君と神楽ちゃんが帰ってくるのを待つ。揃ったらお誕生日会の始まりだ。 「なーに笑ってんの」 銀ちゃんは上から覗くようにして私を見ていた。その起き抜けの声もいつもより柔らかくて楽しそうだ。 「ううん、今日のこと考えてた。お誕生日おめでとう、銀ちゃん」 「それ昨日も聞いた」 「うん。でも何回でも言いたい」 「あっそ。勝手に言ってろ」 おめでとうおめでとうおめでとう、何回も繰り返して言うと銀ちゃんはむず痒そうに私の頭を自分の胸に押し当てた。それにさえ小さく笑い声を漏らすと銀ちゃんも肩をゆらして笑った。 「ありがとうありがとうありがとう」 優しい声は寝起きだからだけじゃないんだろう。ああなんて幸せ。銀ちゃんに言ったら薄ら寒いと笑われそうなその言葉でさえ、心の中で呟くと温かいものに形を変えて身体中に広がる。 「銀ちゃん」 「ん?」 「晩御飯何がいい?」 「・・・ハンバーグ」 今日これからのことを考えると楽しみで仕方ない。でも、今はもう少しこのままでもいいだろうか。起きたらまたおめでとうって言おう。今日一日を数え切れないほどの言葉と気持ちで埋め尽くすのだ。あくびをしながら、ゆるく考え事をして、もう一度私を抱きしめて目を瞑った銀ちゃんに合わせてゆっくりと瞼を下ろす。 |