はメールを嫌った。


「だって、声も聞こえないし顔も見えないんだもん。文字だけなんてつまんない」


その一言はとてもらしくて、彼氏彼女らしく少しくらいメールをしてもいいんじゃないかと文句を言おうとした俺の胸にストンと落ちてきた。


だからにメールは一度も送らなかった。何かあったときは電話をして、何もないときも電話して、くだらないことでわらったりした。


ここ最近はが携帯使用禁止の場所にいるから毎日会いに行った。その日学校であったことを話し、銀八からの伝言を伝え、その日の授業ノートを見せた。そしてやはりくだらないことでわらいあって。


それなのに、


「沖田君、これ、が書いた手紙なの。読んであげてくれないかしら」


渡された淡いピンクの封筒にはの少し癖のある字で「総悟へ」と書いてあった。







 総悟へ
正直、私の人生は短すぎたと思う。18年だけなんて、なんか損した気がするよ。
でもだからといって神様を恨んだりはしないよ。短かったけど、それなりに楽しかったもん。総悟とも沢山一緒にいれて幸せだったから。私の人生こんなもんかなーって。
違う。そんなことが言いたくてわざわざ手紙なんて書いてるわけじゃないんだよ。
総悟に会えてよかった。総悟と一緒にわらうことができてよかった。総悟が隣にいてくれてよかった。
つまり総悟が大好きということです。
だからさ、あんま悲しまないでほしいんだ。総悟が悲しんでるとこなんて見たくないから。でも実を言うと結構悲しんでほしかったりもする。私がいなくなって、なのにケロッとしている総悟も嫌だ。なんかむかつく。
だから、少し悲しんで、そしたら顔あげて。後はたまに私のこと思い出してくれればいいよ。間違っても忘れることのないようによろしく。








何がよろしく、だ。
ふざけんな。こんな脳天気な手紙だけ残していなくなるなんて。だいたいお前は言ったじゃないか。文字だけじゃ声も聞こえないし顔も見えないって。
なのに、どうしてこの手紙はたった一度読んだだけなのにお前の顔が浮かぶんだ 。どうして声が聞こえてくるんだよ。
なんで涙がでるんだよ。


けれど、この紙には俺が涙を落とす前から既に所々に丸いシミができていた。


「…バカめ」


こんな言葉でまとめなくても、忘れるなんてありえないし悲しむに決まっている。こんな手紙泣きながら書くことなんてなかったのに。


1行開けて書かれた最後の行は文字が震えていた。
泣きながらこんなこと言われて、俺はどうすればいいんだ。 でも結局なんだかんだ言ってあいつの望むことはこの一つなのだ。


すっかり濡れてしまった顔をあげて遠くを見つめる。あいつの笑い声が聞こえた気がした。









ファースト・ラスト・ラブレター







でも、やっぱり笑ってる総悟が一番好き。


だから総悟、わらってよ