「この世の終わり、でございますか?」 カンと乾いた音が響いて灰が落とされる。煙管を足元に置くと高杉は片足だけを縁に乗せ窓辺に腰掛けた。 「いつか来るぜ。俺の手でこの世の全てを終わらせる時がなァ」 独特の笑い声を上げて高杉は何の明かりもない暗い室内で正座する女を見た。 「その時お前はどうする?」 隻眼が女を射抜く。その視線に俯いていた女はゆっくりと顔を上げて高杉を見た。月の光を受けた簪の蝶が女の言葉を代弁をするようにしゃらしゃらと闇を舞う。 「俺と共に果てるとでも言うつもりか?」 「貴方様のいない世界に未練などございません。最期のときまでお傍に置いてくだされば幸せにございます」 「幸せ、ね・・・」 「最期まで最愛の人のお傍にいたいと願うのが女です」 「女ってーのはくだらねぇ生き物だな」 女は口元を隠し淑やかに笑った。 「なんだ?」 「世界を壊すなどと戯言を言う男も大概女と変わらないでしょう」 「ハッ、違いねぇな」 女の言葉に可笑しそうに口元を歪めた高杉は窓辺から降りて女の前に方片膝を立てて座った。白く細い指が女の頬を這う。 「俺の戯言には乗れねーか?」 「貴方様が何をしようと私はただお傍にいたいと願うだけです。ですが、」 高杉はつうと目を細め女を見下ろす。 射し込んできた月の光が女の肌を蒼白く移し、首筋から流れる一筋の後れ毛が艶やかに光を映した。 「貴方様のお戯れならばこの世をさぞかし楽しく映すことでしょう」 再び、あの独特の笑い声が部屋に響く。 高杉の指が女の顎をしっかりと捉え、上を向かせた。 「いいぜ。世界の終わりまで俺の傍にいさせてやる、」 紅く形良い唇が緩やかに弧を描き、伏した睫毛が震える。 喜びの終焉 |